Long Story
□敢闘、その後
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ようやっとシエルとセバスチャンの二人がボートで救助船に辿り着いたとき、豪華客船から命からがら逃げてきた他の乗客達は、すでにこの大きな帆船に避難し終えているようだった。
役目を終えて空になった救命ボートが数隻、静かに波間を漂っている。セバスチャンはその間をくぐるようにしてボートを進め、帆船の脇にとんっ、と軽い音を鳴らしながら止めた。
船の上から、等間隔を置いて幾本も縄梯子が垂れ下がり、風にユラユラと揺れている。そのうちの一本を掴み取り、足を掛けて登ろうとしたシエルは、そこで自分が足を傷めていたことを思い出した。じんじんとした痛みが右足首から鈍く広がって、右足全体を重く腫れ上がらせているような感覚に思わず顔が引きつってしまう。
シエルのその様子を目ざとく見つけ、セバスチャンが声を掛けてきた。
「その足では梯子を登るのは難しいでしょう。恐れながら、私が坊ちゃんを背負って…」
「いい」
言ってる側からバッサリと執事の申し出を断るシエル。